トウガラシ類のモザイク病についてまとめておこう

畑のトウガラシ類に発生している病気について書籍やWebでいろいろ調べてみたところ、どうやらモザイク病で間違いなさそうです。
ただし、ピーマン/ししとう/トウガラシなどのトウガラシ類に感染するモザイク病は多くの種類があり、扱いがかなり厄介なようです。

分かったことをまとめておきましょう。

なお、「ピーマン/ししとう/トウガラシなどのトウガラシ類を病気の多い市民農園で栽培した場合」という視点でまとめています。
庭やベランダの菜園とは少し扱いが違うと思いますのでご注意ください。

要点

1)感染するウイルスは多数ある
2)ウイルスは重複して感染する
3)症状は一定ではない
4)対策は万全に

詳細

1)感染するウイルスは多数ある

トウガラシ類にモザイク症状を引き起こすウイルスを集めてみました。

1)アルファルファモザイクウイルス(AMV)
2)ソラマメウイルトウイルス(BBWV)
3)キュウリモザイクウイルス(CMV)
4)ペッパーマイルドモットルウイルス(PMMoV)
5)ジャガイモYウイルス(PVY)
6)タバコマイルドグリーンモザイクウイルス(TMGMV)
7)タバコモザイクウイルス(TMV)
8)トマトアスパーミーウイルス(TAV)
9)トマトモザイクウイルス(ToMV)
10)トマト黄化えそウイルス(TSWV)

ざっと調べただけでこれだけあります。
恐らく探せばまだまだありそうです。

この中で発症が多いと思われるのが太字

トウガラシ類だからペッパーマイルドモットルウイルス(PMMoV)だけに感染する、ということではなく、他の野菜のウイルスにも感染します。
つまり他の野菜が病気になっているとトウガラシ類にも被害が広がるということです。

いろいろな野菜を混植をしている市民農園では、トウガラシ類に感染可能なウイルスもたくさん存在すると考えて間違いありません。

2)ウイルスは重複して感染する

一つのウイルスに感染すると他のウイルスが感染しにくくなると聞いていたのですが、実はそんなことはなく重複して感染します。
そして重複感染すると症状が悪化します。

これがウイルスの特定を難しくしています。

3)症状は一定ではない

現在畑で発生しているモザイク病も株により症状が異なっています。

・葉の萎縮の程度

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・若葉の落葉の有無
・茎の褐化の有無

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・若葉の黄化の有無

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・生長点のねじれの有無

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・葉の糸葉化の有無

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・モザイクの違い(細かいもの/ぼやけたもの/くっきりしたもの/葉脈に沿ったもの)

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おそらく複数のウイルスが存在すると考えて問題無いでしょう。

モザイク病に掛かると必ず同じ症状が発生するわけではなく、ウイルスの種類や密度、重複して感染した組み合わせで実害が変化します。
また同一ウイルス、同じ野菜でも品種の違いで症状が変わることもあります。
そして病気はモザイク病だけではありません。

つまり症状だけをみて原因を断定することは出来ないということです。

4)対策は万全に

本来であればウイルスを特定してそのウイルスに最適な対策をすべきなのですが、罹患している病気の種類の多さから考えるとそれは不可能でしょう。
出来る限りのことをして「発症率を下げる」「重症化を防ぐ」という方針しか残されていません。

一般的な菜園とは違い、病気の多い厳しい環境の市民農園で栽培をするなら下記のような対策が必要です。

耐病性のある品種を選ぶ

出来るだけ耐病性のある品種を選ぶとよいでしょう。

しかし期待しているほどの効果はないかもしれません。
全てのウイルスに対して耐病性を持つ品種は存在しないからです。

現にキュウリモザイクウイルスとトマトモザイクウイルスに耐病性を持つピーマン「京波」「エース」にもモザイク症状が出てきてしまいました。

それでも重複感染を減らすことができれば重症化は軽減できるメリットがあります。
その程度の効果しか期待できませんが、市民農園で栽培するなら耐病性の品種を選んでおきましょう。

しかしトウガラシ類で耐病性のある品種はピーマンとパプリカの一部だけです。
残念ながらししとうやトウガラシには耐病性品種は存在しないようです。

大苗で定植する

まだ抵抗力の弱い小さい苗を露地栽培するのは危険です。
病気に感染し難いように定植は出来るだけ遅らせたほうがよいでしょう。
大きなポリポットに植え替えるなどして苗を大きく育ててから植え付けましょう。

収穫が早い品種を選ぶ

パプリカや鷹の爪などは結実から色づくまで1,2ヶ月かかります。
収穫まで時間がかかる品種はそれだけ病気の被害にあう可能性が高く、収穫ゼロで全滅してしまう恐れもあります。
病気の多い畑で栽培をするなら、ししとうや甘唐辛子のように緑色の未成熟な実を短期間で収穫する品種を選びましょう。

伝染ルートを断つ

各種ウイルスはそれぞれ特有の伝染ルートを持っています。
ウイルスの特定ができない以上、全てに対して手を打たないといけません。

①虫による感染
タバコモザイクウイルス(TMV)やキュウリモザイクウイルス(CMV)などはアブラムシによって伝播されます。また、トマト黄化えそウイルス(TSWV)であればアザミウマです。
虫が発生する前にオルトランを使いましょう。
ただし、樹液を吸わせて効くタイプの農薬ですので必ず一度食害にあいます。
このため虫によるウイルス感染を完璧に防除出来るわけではありません。
それでも発症率を大幅に減らしてくれることでしょう。

②土壌感染
土壌中に残り感染するウイルスがいくつかあります。
これらは土壌消毒をしないかぎり完全な駆除は出来ませんが、市民農園では現実的ではありません。
土作りの段階で日光消毒を行いウイルス密度を下げ、発症率の低下を狙います。
これに関してはまだ追加調査が必要です。

③除草
雑草からの虫の飛来を減らすため、除草をしっかりする。
通路などの共用部分も定期的に除草をしましょう。
市民農園ではルーズな人もいるのでなかなか難しいのですが。

④ハサミの消毒
汁液伝染をするタイプのウイルスが多いため、ハサミを消毒しながら管理作業をしなくてはいけません。
一株一株ごとに消毒が必要となります。

ところがタバコウイルス(TMV)のように熱湯やアルコールでもなかなか死滅しないウイルスもありますので、作業の合間に組み込める手軽な手法を探さないといけません。

現在は刃の傷みを覚悟してハサミを炎で炙る加熱消毒を考えています。
なお、しいたけ菌糸摘出液で濡らすことで感染を防ぐという手法もあるようです。
これについてももう少し調査が必要です。

⑤自家採種をしない
種子で伝播するモザイクウイルスもあります。
モザイク病が発生している畑で育てた野菜から自家採種をすると、次のシーズンに再発する恐れがあります。
畑の惨状をみると自家採種は諦めないといけません。

最後に

私が利用しているのは50年近く連作に連作を重ねた市民農園です。
一区画だけいくら対策をしたところで無数の病気がすぐそばにあると考えておいたほうが良いでしょう。
市民農園を利用するのであれば「病気が蔓延している畑でどのように野菜を育てるか」、そのように考えなおさないといけません。
この点が庭やベランダの菜園とは大きく違います。

周りの方にお話を伺ってみると「去年はキュウリが全滅」「その前の年はアレがだめ」など年によって病気の発生にムラがあるようです。
そんな様子を伺いながら各自農薬を工夫して被害を減らしているようです。

イメージとは異なり「無農薬で安全な野菜を」などと悠長なことを言ってられないのが市民農園の真の姿のようですね。
野菜づくりをはじめて3ヶ月、初心者なのにエライものに手を出してしまったなぁと思うことしきり。

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